ひさです。事件のさかのぼり、2本目です。
「かぼちゃの馬車」は女性向けシェアハウスの名前で、ワンルームではありません。それでも書く理由は、この事件で処分されたのが売った会社ではなく、貸した銀行だからです。あなたのワンルームにも、ローンがあります。
一次資料。金融庁の処分文(2018年10月5日)
金融庁は2018年10月5日、スルガ銀行に対して銀行法にもとづく命令を出しました。処分文の要点はこうです(金融庁の報道発表・2026年9月15日確認)。
| 項目 | 処分文の内容 |
|---|---|
| 業務停止 | 2018年10月12日から2019年4月12日まで、投資用不動産融資の新規融資を停止。自己資金の割合が50%未満の住宅ローンの新規融資も同じ期間停止 |
| 処分の理由(要点) | シェアハウス向け融資で、販売側のチャネルが賃料や入居率を改ざんし、不動産価格を割り増しして、多額の過度な融資が実行された |
| 銀行側の関与 | 営業職員が改ざんを明確に認識、もしくは相当の疑いを持ちながら業務を進めていた |
| 蔓延していた不正 | 債務者の預金残高や所得確認資料の改ざん、見せ金などの不正行為 |
| 審査 | 審査が形骸化し、実質的な信用リスク管理が機能していなかった |
| 改善計画 | 2018年11月末までに提出し直ちに実行。以後3か月ごとに進捗報告 |

行政が銀行に対してここまで書くのは珍しい。「売り手が数字を改ざんし、銀行がそれを知りながら貸した」。処分文は、そう言っています。
その前に何があったか(報道ベース)
販売会社(スマートデイズ)は「30年の賃料保証・利回り8%」でシェアハウスを1棟1億円を超える価格で売りました。2018年1月、オーナーへの賃料の支払いが止まる。同年4月に民事再生を申請、5月に破産手続きの開始。オーナーには、賃料が入らないまま1億円超のローンが残った。
この部分は報道の整理で、処分文には出てきません。数字の細部は報道によって差があります。
あなたのローンに、同じ穴があるか
処分文が挙げた不正は3種類です。それぞれ、ワンルーム投資で起きうる形に置き換えます。
| 処分文の不正 | ワンルームで起きうる形 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 賃料・入居率の改ざんで価格を割り増し | 「想定家賃」を相場より高く書いた資料で、価格と融資額を決める | いまの募集家賃と、買ったときの資料の想定家賃を比べる |
| 預金残高・所得資料の改ざん | 融資を通すために、あなたの残高や年収が「盛られた」 | 銀行に出した書類の写しを持っているか。持っていないなら、それ自体が異常 |
| 審査の形骸化 | 物件の評価より多く貸す(提携ローン・フルローン) | 買値と、買い手の融資評価の帯を比べる(売却想定の特集) |
3つのうち1つでも当てはまるなら、あなたのローンは「物件が生む家賃」ではなく「盛った数字」で組まれています。家賃が想定どおりに入らないのは、運が悪いのではなく、最初からそうだったということです。
銀行が止まると、何が起きるか
この事件で私が一番重いと思うのは、業務停止の中身です。投資用不動産融資の新規停止、6か月。
銀行が投資用の融資を止めると、その銀行で買おうとしていた人が買えなくなる。つまり、その時期に売ろうとした人の買い手が減る。あなたのワンルームの買い手も、誰かの融資で買います。金融庁が銀行を止めたり、銀行が自主的に投資用の融資を絞ったりすると、買い手が減り、売値が下がる。
売る側から見ると
事件は「他人事」ではなく、買い手の財布が閉まる日です。処分の日付は2018年ですが、同じことは銀行が投資用の融資を絞るたびに起きます。
今日やること
3つの差が大きいほど、「盛られた数字」で組まれたローンの可能性が高い。そういう部屋は、金利が上がるとまず手出しが増えます。トップの金利上昇シミュレーターで、その増え方を先に出してください。持つか売るかは、それからです。資料の読み方で止まったら、下のどれかで私に見せてください。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*処分の内容は金融庁の報道発表(2018年10月5日)にもとづきます。販売会社の経緯は報道の整理で、個別の事実関係は各報道が正です。本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の価格を示すものではありません。売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。*