ひさです。今日は「相場」の話です。
「うちのマンション、いくらになりますか」と聞かれたとき、多くの人が最初に見るのは、同じ建物の売出価格です。ポータルサイトに出ている値段。あれを相場だと思って、自分の部屋の値段を決める。

結論から言います。売出価格は相場ではありません。売り手の希望です。そして、その希望の半分以上は、買い手の融資が付かない水準にあります。
見たデータ
2023年〜2026年に売りに出た、東京23区・横浜・川崎の投資用ワンルームの売出資料3,985件。それぞれに、当社の割高診断が出した評価額(銀行が融資を組むときの評価の計算式で出した参考値)を付けてある。比べたのは「売出価格 − 評価額」。プラスなら、売出価格のほうが高い。
個別の建物や部屋の価格はここでは出しません。出すのは全体の傾向だけです。
56%は評価より高い
| 区分 | 件数 | 割合 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 危険(評価から大きく乖離) | 1,639 | 41% | 買い手の融資が下りにくい。下りても多額の手出し |
| 割高 | 586 | 15% | 評価より高いが、買い手が自己資金を積めば届く |
| 許容 | 595 | 15% | 評価とほぼ同じ |
| 安全 | 1,165 | 29% | 評価以下。融資が付きやすい |
危険+割高で56%。売りに出ているワンルームの半分以上は、買い手が銀行の評価どおりに融資を組んでも買えない値段で出ています。評価より高い物件の、評価との差は平均443万円。中央値で見ると、全件で141万円です。
年々、乖離が広がっている
| 売出の年 | 件数 | 危険の割合 | 評価との差(平均) |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 1,030 | 33% | 247万円 |
| 2024年 | 1,202 | 45% | 375万円 |
| 2025年 | 1,152 | 44% | 329万円 |
| 2026年(9月まで) | 444 | 48% | 324万円 |
2023年には3件に1件だった「危険」が、2026年には2件に1件です。売り手の希望価格が上がった一方で、銀行の評価(家賃が元)はそれほど上がっていない。売り手の希望と、買い手が払える額の差が、開いています。
場所で違う。港区は65%が危険
| 区 | 件数 | 平均売出価格 | 危険の割合 | 評価との差(平均) |
|---|---|---|---|---|
| 港区 | 220 | 4,248万円 | 65% | 616万円 |
| 荒川区 | 64 | 2,507万円 | 61% | 456万円 |
| 渋谷区 | 244 | 4,098万円 | 59% | 502万円 |
| 文京区 | 99 | 2,788万円 | 58% | 400万円 |
| 品川区 | 148 | 3,657万円 | 54% | 534万円 |
| 豊島区 | 246 | 2,601万円 | 48% | 275万円 |
| 世田谷区 | 166 | 2,727万円 | 45% | 362万円 |
| 中央区 | 165 | 3,720万円 | 44% | 355万円 |
| 新宿区 | 212 | 3,073万円 | 43% | 330万円 |
| 板橋区 | 194 | 2,203万円 | 39% | 229万円 |
| 練馬区 | 174 | 1,895万円 | 32% | 200万円 |
| 川崎市 | 170 | 1,860万円 | 31% | 187万円 |
| 横浜市 | 494 | 1,669万円 | 22% | 156万円 |
「都心なら高値が付く」は半分だけ本当です。都心は売出価格も高いが、評価との差も大きい。港区の売出価格をそのまま信じて自分の部屋に値を付けると、3件に2件は買い手の融資が付かない水準になります。
新しい建物ほど、希望と評価がずれる
| 築年 | 件数 | 危険の割合 | 評価との差(平均) |
|---|---|---|---|
| 2020年以降 | 167 | 53% | 568万円 |
| 2010年代 | 910 | 55% | 451万円 |
| 2000年代 | 993 | 54% | 356万円 |
| 1999年以前 | 1,910 | 27% | 197万円 |
新築に近いほど、売り手は「買ったときの値段」で売りたがります。買い手は「いまの家賃」で値段を付ける。この差が、そのまま評価との差になります。築20年を超えると、売り手の希望が現実に寄ってきて、差は小さくなる。
売る人にとって、これが何を意味するか
4つ
同じ建物の売出価格は「上限の希望」だと思ってください。それで売れた保証はどこにもありません(売出資料は成約を追っていません)。
買い手は融資で買います。だから、売れる値段の天井は「買い手の銀行が付ける評価」です。売出価格の56%はその天井を超えています。
高く売りたいなら、売出価格の帯の上限に出すのは自由です。ただし、その帯で「売れている」かどうかは別の話。長く売れ残ると、値下げのたびに「売れ残り物件」として見られます。
早く売りたいなら、評価の帯に置くのが近道です。融資が付く値段なら、買い手の候補が一気に増える。
私は、どちらが正しいとは言いません。高く出して待つ人もいれば、評価の帯で早く抜ける人もいる。ただし、両方の帯を知らずに決めるのは、目隠しで値札を付けるのと同じです。
今日やること
建物ごとに、いまいくらで売りに出ているか(売出価格の帯)と、買い手の融資が付きやすい帯を並べたページを順に作っています。まず自分の建物の帯を見て、トップの金利上昇シミュレーターで待つ間の返済も出して、それから決めてください。帯の読み方で迷ったら、下のどれかへ。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*数字は当社の割高診断データ(2023〜2026年の売出資料3,985件)の集計です。評価額は銀行の融資評価の計算式で出した参考値であり、査定ではありません。売出価格は成約価格ではありません。個別の物件の価格は示していません。売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。*