ひさです。今日は手口の話です。
ワンルームを買った人の多くが、最初に聞いた言葉がこれ。
節税になります。

私のところに来る相談でも、買った理由の上位にこの言葉があります。そして2年目に「思ったより戻ってこない」と気づく。3年目に「むしろ増えている」と気づく。なぜそうなるのか、数字で説明します。
「節税」の仕組み。営業マンが言う部分
ワンルームを貸すと「不動産所得」が発生します。家賃から経費を引いた残りです。経費には、管理費・修繕積立金・ローンの利息・減価償却費・固定資産税などが入る。家賃より経費が多ければ不動産所得はマイナスになり、そのマイナスを給料の所得から引ける(損益通算)。引けた分だけ、所得税と住民税が減る。
ここまでは本当です。営業マンは嘘は言っていない。言っていないことがあるだけです。
モデルケースで計算する
前提
年収600万円の会社員。課税所得はおよそ298万円(給与所得控除・社会保険料・基礎控除を引いた後)。所得税率10%・住民税率10%で合わせて20%。
新築ワンルーム2,500万円(建物1,500万円・土地1,000万円)。家賃9万円(年108万円)。経費は、管理費と修繕積立金 年18万円/ローン利息 年50万円(初年度)/減価償却 年32万円(建物1,500万円÷47年)。初年度だけかかる費用(登記・不動産取得税・ローン手数料など)が約60万円。
初年度は、家賃108万円に対して経費が160万円(管理修繕18+利息50+償却32+初年度費用60)。不動産所得は−52万円で、戻る税金は−52万円×20%=約10万円。営業マンが見せるのはここです。「10万円戻ります」。本当です。
2年目は、経費が99万円(管理修繕18+利息49+償却32)。不動産所得は+9万円。税金は約1.8万円、増える。
初年度費用が消えた瞬間に、不動産所得は黒字になります。黒字になれば、税金は戻るのではなく増える。初年度の10万円のために、2年目から毎年2万円ずつ払う。5年で元が取れなくなり、10年で差し引きマイナスです。
「それでも赤字なら節税になる」への答え
「うちは2年目以降も赤字だから、節税になっている」という人がいます。
赤字ということは、家賃より経費が多いということです。経費の中で現金が出ていかないのは減価償却だけ。それ以外は全部、あなたの財布から出ています。年20万円の赤字で、税金が4万円戻る。手元の現金は16万円減っている。これを「節税」と呼ぶかどうか。
私は、お金を失って、失った額の2割が戻ってくる仕組みを節税とは呼びません。
節税が、売るときに牙をむく
もう一つ、営業マンが言わない話があります。
減価償却は、売るときに戻ってくる
減価償却で経費にした分は、売るときに「取得費」から引かれます。買値2,500万円でも、10年で320万円償却していれば、税金の計算上の取得費は2,180万円。売値が2,300万円なら、買値より安く売ったのに、120万円の「利益」に課税されます。
節税は税金を消していたのではなく、売るときまで先送りしていただけ。この話は「5年の壁」の記事に書きました。
今日やること
そのうえで、この部屋を持ち続ける理由が「節税」しかないなら、その理由はもう無い。ほかの理由があるなら持てばいい。無いなら、トップの金利上昇シミュレーターで金利が上がったときの手出しを出して、それから決めてください。確定申告書の見方で迷ったら、下のどれかへ。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*本記事はモデルケースによる一般的な説明であり、個別の税務判断は税理士にご相談ください。個別の物件の価格を示すものではありません。*