ひさです。手口の話、3本目です。
「節税」「年金代わり」と並んで多いのが、これ。
働かなくても、家賃が入ってくる。不労所得です。

嘘ではないんです。家賃は、あなたが働かなくても入ってくる。問題は、入ってきた家賃より多いお金が、あなたの給料から出ていくこと。それは所得ではなく、支出です。
数字にします。
モデルケース
家賃8.5万円(年102万円)。借入2,300万円・金利2.4%・30年・元利均等で、毎月の返済は89,687円の理論値(2.4%は代表的な金利ではなく計算の起点)。管理費・修繕積立金が月1.2万円、固定資産税・都市計画税が月換算0.5万円。
毎月およそ2.2万円、年26万円が、あなたの給料から部屋に流れています。家賃は不労で入ってくるが、差額はあなたの労働で払っている。空室・修繕・入れ替えの費用は、まだ入れていません。
「所得」と「支出」の取り違え
営業マンの話法は、3段でできています。
2番で家賃と返済を「ほぼ同じ」と丸めるのが、この話法の芯です。差額が5,000円でも2万円でも、「ほぼ回ります」と言われる。「ほぼ」の中身を月額で聞いた人は、相談で見る範囲では少ない。聞いた人は、たいてい買っていません。
税金の上でも「所得」にはなりにくい。この例の不動産所得は、家賃102万円から経費(管理費・修繕積立金14.4万円、固定資産税6万円、ローン利息 初年度約55万円、減価償却 約30万円)を引くと、ほぼゼロかマイナスです。所得がゼロなら、不労所得もゼロ。「節税になります」の記事に書いた話と、同じ構造です。
「元金は減っているから貯金と同じ」への答え
正しい反論です。返済89,687円のうち、初年度の元金は約53万円(月4.4万円)。残債はその分減っています。だから「毎月2.2万円払って、月4.4万円の貯金をしている」と言えなくはない。
ただし、この貯金には条件が2つ付いている
引き出せるのは、売ったときだけ。売値が残債を上回っていなければ、貯金は引き出せません(「残債が売値を上回るとき」の記事)。
金利が上がると、貯金の速さが落ちる。返済が増えて、そのうち元金の割合が減ります。
「不労所得」を「売ったときに引き出せるかもしれない貯金」と言い換えると、話法の正体が見えます。
不労所得になる部屋の条件
差し引きがプラスの部屋は、あります。条件は単純で、家賃から管理費・修繕積立金と税金(月換算)を引いた額が、ローンの返済より大きいこと。
この例で言えば
家賃が10.7万円以上なら、差し引きはプラスに転じます。あるいは頭金を入れて借入を1,800万円台にすれば、返済は月7万円台になり、同じ家賃でもプラス。そういう部屋は「不労所得」と呼んでいい。私は仲介業者ではないので、そういう部屋には「持て」と言います。
買った値段と借りた額が家賃に対して大きすぎる部屋だけが、労働所得を食います。部屋のせいではなく、値段のせいです。
今日やること
4番で「払い続ける総額」のほうが大きければ、不労所得ではなく、労働所得の仕送りです。トップの金利上昇シミュレーターで、金利が上がったときの差し引きも見ておいてください。通帳の並べ方で迷ったら、下のどれかへ。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*数字はモデルケースによる試算で、家賃・経費・金利は前提として置いたものです。返済額と元金は元利均等返済の計算式による理論値で、個別の契約は金融機関の返済予定表が正です。税務の個別判断は税理士にご相談ください。特定の会社・商品を指すものではなく、個別の物件の価格を示すものでもありません。売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。*