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5年ルールは、返済を減らす仕組みではない。銀行の説明書に「しわ寄せ」と書いてある

5年ルールは、返済を減らす仕組みではない。銀行の説明書に「しわ寄せ」と書いてある

ひさです。

変動金利で借りている方から、よくこう言われます。

5年ルールがあるから、しばらくは大丈夫ですよね

返済額が5年間変わらないのは、そのとおりです。ただ、変わらないのは口座から引かれる額だけで、その裏で何が起きているかは別の話です。今日は、銀行が自分で書いている説明書を読みます。

説明書に「しわ寄せ」と書いてある

au じぶん銀行の住宅ローン説明書(K007-20260916)のPDFを取って、9ページ全部を読みました。5年ルールの説明は、こう続きます。

借入金利の引上げにより、返済額に占める利息の額が増え、元金の返済額は利息が増えた分だけ減少します。(中略)借入金利が引上げられたとき以降の毎回返済額から、減少された分に相当する元金の合計額が最終返済期日に繰り延べられた(しわ寄せ)状態となります。

「しわ寄せ」は、私が選んだ言葉ではありません。銀行の説明書に書いてある言葉です。

1毎月の返済額は、そのまま5年ルール。金利が上がっても、口座から引かれる額は変わらない2内訳だけが変わる利息の額が増え、元金の返済額は、利息が増えた分だけ減る3減った元金は、先に送られる説明書の言葉で「最終返済期日に繰り延べられた(しわ寄せ)状態」45年後に、繰り延べ分も入れて計算し直すこのとき新しい返済額は、前の額の125%が上限。上限を超える分は、また先へ
au じぶん銀行「住宅ローン説明書」(K007-20260916)の記述から。2026年9月21日にPDFを取得して読んだ

125%ルールは、上にしか効かない

5年後の見直しで、新しい返済額は前の額の125%を超えない。これが125%ルールです。同じ説明書の、すぐ次の一文を読んでください。

借入金利の引下げが行われ返済額が減少する場合は、制限はありません。

つまり、こういうことです

上がるときは1.25倍で止まる。下がるときは、止まらずに下がる。借りる側に不利な仕組みではありません。ただ、1.25倍で止まった残りが消えるわけでもありません。止まった分は、また先へ送られます。

金利ごとに、返済額はいくらになるか

説明書には、金利別の返済額の表が載っています。借入2,500万円・期間35年・元利均等の例です。

年2%82,815円年3%96,212円年4%110,693円年5%126,171円年6%142,547円
借入2,500万円・期間35年・元利均等・半年毎増額返済なし。au じぶん銀行の説明書に載っている表を、元利均等の式で当方が検算した(5つとも一致)

この表のすぐ下に、注意書きがあります。

これは、金利変動によりご返済額が変わることを表しています。実際の毎月返済額は、上述のとおり、5年ルールに従い5年間変わりませんので、ご注意ください。

私はこの注意書きが、いちばん正直だと思いました。表は「本当はこの額」を示していて、5年ルールはそれを5年間見せないだけだ、と書いてあるわけです。数字は5つとも、元利均等の式で計算し直して一致することを確かめました。

元利均等だけに起きること:未払利息

金利が著しく上がると、利息の額が毎月の返済額を上回ることがあります。その差額が「未払(未収)利息」です。説明書はこう書いています。

未払(未収)利息は、元利均等返済の場合にのみ発生するもので、元金均等返済の場合には発生しません。

充当の順番も決まっています。未払利息 → その月の利息 → 元金。元金にたどり着くのは最後です。

公平のために、書いておきます

同じ説明書に「未払(未収)利息にさらに利息が付くことはなく、元金とは別に管理します」とも書かれています。雪だるま式に増える話ではありません。

ただし、こうも書かれています。「最終返済期日が到来しても返済が完了せず、元金および未払(未収)利息が残る可能性があります。その場合は、最終の返済額に加算されます。」

5年ルールが「効かない」場面もある

これは、あまり知られていないところです。同じ説明書に、こう書かれています。

上記(イ)以外の事由による借入金利の変更がある場合においては、最終返済期日を変えずに毎回の元利金返済額を再計算し(中略)当該再計算においては「5年ルール」および「125%ルール」は適用されません。

返済額軽減型の一部繰上返済が行われた場合の当該繰上返済後の毎回の約定返済額の再計算においては「5年ルール」および「125%ルール」は適用されません。

返済を軽くするつもりで繰上返済をすると、そのタイミングでは上限が外れる。知っておく価値のある一文です。

🚨 ここで、いちばん大事な線を引きます

書面によって、書いてあったり書いてなかったりします

ここまで読んだのは、1つの銀行の、住宅ローンの説明書です。そこで3つ並べて見ました。

・au じぶん銀行(住宅ローン)… 5年ルール・125%ルール・未払利息、いずれも記載あり
・オリックス銀行(不動産投資ローン)… 同じ仕組みが、同じように書いてあります(5回目ごとの10月1日・1.25倍が上限・繰延利息)
・静岡銀行(住宅ローンの商品概要説明書2ページ)… この書面には見当たりませんでした

⚠️ 3つ目は「その書面に無かった」だけで、「その銀行に無い」ではありません。契約証書や金利変動リスク説明書は見ていません。

だから「あなたのローンにも5年ルールがあります」とは書きません。契約書と返済予定表を開いて、「5年」「125」「繰延」の語があるかを自分で見てください。無いなら、金利が上がった月から返済額が動くタイプかもしれません。

金利の話でいちばん確かなのは、いつもあなたの返済予定表です。ニュースの数字でも、この記事でもありません。

🚨 そして、売る日に効いてきます

ここからが、このサイトで書く意味のあるところです。オリックス銀行の不動産投資ローンの説明には、先送りされた利息(繰延利息)の行き先が書かれています。本文を取って読みました。

繰上返済や条件変更などを行う場合は、繰延利息の精算が必要です。

最終回(全部繰上返済を含みます。)の返済額は、毎月の返済額にかかわらず残元金とその利息および繰延利息を加えた金額です。

売るというのは、全部繰上返済です。つまり5年ルールで先送りにされていた利息は、売る日にまとめて出てきます。

毎月の返済予定表その月の返済額元金と利息の内訳残元金繰延利息は、ここには出てこない売る日(全部繰上返済)残元金+ その利息+ 繰延利息3つを足した額が最終回の返済額
オリックス銀行「不動産投資ローン 借入金利と返済方法」の記述から。2026年9月21日に本文を取得して確認した

「売ったらいくら残るか」の計算に、これが抜けます

売却の手取りは、ふつう「売れる価格 − 残債」で考えます。私もその形で説明してきました。でも繰延利息が積み上がっていれば、引かれるのは残債だけではありません。

しかも毎月の返済予定表を見ているだけでは、この金額は見えません。返済額はずっと同じに見えているのに、売る日に別の行が出てくる。これが5年ルールのいちばん厄介なところです。

同じ説明には、こうも書かれています。

急激な金利上昇により、毎月の返済全額が利息のみとなり、元金の返済額がゼロになることがあります。

返済額の減額には下限を設定しません。ただし、適用利率に上限および下限はありません。

返済額には蓋があるけれど、金利そのものに上限は無い。銀行が自分でそう書いています。蓋があるのは「毎月引かれる額」だけで、払う総額に蓋があるわけではない——ここを取り違えないでください。

🚨 これはオリックス銀行の不動産投資ローンの文言です。他行が同じ扱いかは確認していません。あなたの契約書に「繰延」「繰延利息」の語があるかを、まず見てください。

金融庁も、同じところを書いている

2019年3月に金融庁が公表した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」には、投資家において留意すべき事項として5つのリスクが並んでいます。PDFを取って28ページ全部を読みました。そのうち2つを引きます。

変動金利で借入を行う場合、金利上昇により返済額が増加するリスク、また賃料収入が減少しても融資の返済は継続する必要があること

返済期間の途中で売却をしようとしても、意図した価格で売却できない、または直ちに売却できないリスク

売れないかもしれないことを、金融庁が2019年の時点で書いています。同じ資料には、こうもあります。

投資利回りを考える際には、単年度かつ賃料収入のみに着目したグロスの利回りだけにとらわれることなく、投資の全期間にわたるすべてのキャッシュ・フロー(中略)を勘案した実質的な利回りを考慮することも有用である

⚠️ この資料は金利の詳細資料ではありません。「5年」「125」の語は1つも出てきません(数えました)。5年ルールの話の出典には使えないので、ここでは引いていません。

それで、どうするか

1契約書で「5年」「125」の語を探す書いていなければ、そのローンにこの仕組みは無いかもしれない。まず有無から2返済予定表で、元金と利息の内訳を見る返済額が同じでも、元金の欄が細っていれば、先送りが起きている3残債が、予定どおり減っているかを確かめる買ったときの予定表と、いまの残高を並べる。ここがいちばん早い4ずれていたら、借入先に次の見直し時期を聞くいつ再計算されるかは契約で決まっている。聞けば教えてもらえる

返済額が同じでも、元金の欄が細っていれば、先送りは起きています。それは予定表を開けば分かります。開いてみて、残債が予定どおり減っていれば、それが今日いちばんの安心材料です。

減っていなかったときに、はじめて「持つか売るか」の話になります。順番はいつも、数字が先です。


*引用した契約文言は、au じぶん銀行「住宅ローン説明書」(K007-20260916)のPDFを2026年9月21日に取得し、9ページ全文を読んで確認したものです。1つの銀行の、住宅ローンについての文言であり、他行の文言や投資用ローンの文言は確認していません。金利別の返済額は同説明書の表で、元利均等返済の式で当方が計算し直して一致することを確認しました。金融庁の記述は「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」(平成31年3月公表)のPDF28ページ全文から引用しています。個別の物件の価格は示していません。売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。融資の条件については、借入先の金融機関にご確認ください。*

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