ひさです。
売却の相談を受けていると、たいてい出てくる話があります。「売りませんか、という電話が、急に増えた」。
買うときの勧誘は知られていますが、売る側にも電話は来ます。しかも売るほうは、こちらが持っている部屋の情報を相手が知っている状態で始まります。
なんで、私が持ってるって知ってるんですか
登記は誰でも見られます。それだけで、所有者の名前と住所は分かる。電話番号は登記には載りませんが、名前と住所が分かれば、そこから先はいくらでも手があります。そこを追いかけても、あなたの時間が減るだけです。
今日は、追いかけるかわりに、電話のかけ方そのものを型で覚えます。型が分かると、名乗りを聞いた時点で判断できるようになります。
先に、この記事の数字の線
この記事を最初に書いた2026年9月21日の時点では、数を書きませんでした。手元に写した投稿がサイトの全部ではないこと、一覧に出る投稿が「続きを見る」で切れた抜粋で、全文を読まないと型の判定ができないことが理由でした。
9月25日に、当サイトの調査担当が投稿の本文だけに絞って、49番号・422件を数え直しました。抜粋ではなく本文なので、型の判定はできるようになりました。だから今回は、件数だけ書きます。
| 型 | 当たった番号 | 投稿の件数 |
|---|---|---|
| ⑥ 何度も、担当を変えて | 21番号 | 53件 |
| ⑤ 非通知・ワン切り・無言 | 13番号 | 40件 |
| ④ 留守電を入れて、折り返させる | 15番号 | 27件 |
| ③ 名乗らない・違う社名 | 3番号 | 3件 |
| ① 調査・アンケートを装う | 2番号 | 3件 |
| ② 物件名を言わずに切り出す | 0番号 | 0件(下の注意) |
⚠️ この数字は「下限」です。割合は書きません
49番号のうち、さらに24番号は取れていません(取りに行った先の制限にかかり、叩き続けずに止めました)。取れた番号も1ページ目(最大60件)だけで、投稿の多い番号は見落としがあります。だから件数は「少なくともこれだけ」であって、「全部でこれだけ」ではありません。母数が固定できないので、「◯%」は書きません。
②が0件なのは、その手口が無いという意味ではありません。「物件名を言わない」は言い回しが定まらず、語では拾えない型です。当方の探した語に引っかからなかっただけです。
社名は書きません。電話帳ナビに出ている相手先名は投稿者が書いたものをサイトがまとめたもので、当方が法人として確かめたものではありません。同じ名前の別の会社である可能性も排除できていません。
⑥・⑤・④の三本柱が、本文を読んだ範囲でいちばん多く出ています。「何度もかけてくる」「非通知で切れる」「留守電に入れて折り返させる」——この3つが、実際に書き込まれている電話の形です。
売却の電話、6つの型
① 調査・アンケートを装う
「不動産売却意識調査」と名乗る。自動音声で「アンケートにご協力ください」と流れる。投稿にはこう書かれていました。
自動音声アンケートは犯罪に利用される事があります
調査だと思って答えると、所有の有無・築年・売る気があるかが相手の手元に残ります。次にかかってくる電話は、調査ではありません。
② 物件名を言わずに切り出す
物件名なしで「マン…」
「お持ちのマンションの件で」とだけ言って、どの部屋かを言わない。こちらが「ああ、◯◯のことですか」と名前を出すのを待っている形です。
この型だけは、条文に当てはめません
あとで規則の6つと並べますが、②はどれにも当たると言い切れません。不親切ではあっても、禁じられている行為とは違います。当てはまらないものを当てはめて書くのは、この記事の値打ちを下げるので、そのまま「当たらない」と書いておきます。
③ 名乗らない、または調べると違う社名が出る
出てないから分かりません/調べると不動産らしい
会社名が◯◯という名称
かけてきた人の名前を言わない。会社名を言っても、検索すると別の会社が出てくる。この型は、あとで出てくる規則の「ハ」に正面から近い型です。
④ 留守電を入れて、折り返させる
留守電を入れて折り返しさせる
こちらからかけ直すと、「お客様からお電話をいただいた」という形になります。折り返した番号は、生きている番号として記録されます。
⑤ 非通知・ワン切り・無言
ワン切り
電話番号非公開の番号にかけてきた
出るかどうかを試している段階です。⑤の時点では、まだ勧誘の言葉すら発せられていません。
⑥ 何度も、担当を変えて
何度もしつこい
毎月のように担当者を変えて同じ内容
6つの中で、私がいちばん重く見ているのはこれです。担当を変えれば、断った記録は相手の側でリセットされます。でも、断ったのはあなたで、相手は同じ会社です。
規則が禁じている勧誘は、6つ
宅地建物取引業法の47条の2第3項は、「国土交通省令で定める行為」を禁じています。その中身が、施行規則の16条の11第1号です。e-Govで原文を開いて、6つを書き出しました。
上の6つと、さきほどの型を並べるとこうなります。断定はしません。行政が認定したわけではないので、書けるのは「どれに近いか」までです。
型と、条文の近さ
③ 名乗らない → ハ に近い。ハは「勧誘に先立って、会社の商号または名称、勧誘を行う者の氏名、そして勧誘目的である旨を告げること」を求めています。3つのうち1つでも欠ければ、ハの話になります。
① 調査を装う → これも ハ に近い。「勧誘目的である旨」を告げていないからです。調査だと言って始める電話は、名乗っていても目的を伏せています。
⑥ 断ったのに続く → ニ に近い。ニは「契約しない旨の意思」だけでなく、「これ以上勧誘を受けたくない旨の意思」も含むと書かれています。担当が替わったことは、条文のどこにも書かれていません。
夜にかかってくる → ホ・ヘ。ただし条文に時刻は書かれていません。「迷惑を覚えさせるような時間」「深夜または長時間」という言葉のままです。
② 物件名を言わない → 当たらない。
電話に出てしまったら、聞くのは3つだけ
いちばん大事なのは3つ目です。「結構です」は、断りに聞こえないことがあります。「今後、勧誘の電話は不要です」。この言い方なら、勧誘を受けたくないという意思をはっきり表したことになります。
そして、言った日付と時刻をメモしてください。次にかかってきたときに効くのは、あなたの記憶ではなく、その1行です。
相手の会社が宅建業者かどうかも、名乗ってもらえれば分かります。免許番号(「東京都知事(3)第◯◯号」のような表記)が分かれば、その会社に処分の記録があるかどうかを、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで無料で引けます。名乗らない相手は、ここを引かれたくないのかもしれません。
売る気がないなら、それでいい
電話が増えたからといって、売る理由にはなりません。逆に、電話が増えたことをきっかけに数字を見直すのは、悪いことではない。
私が言えるのは、決めるのは電話の向こうではない、ということだけです。残債・金利・家賃・修繕積立金。この4つが分かれば、持つほうが得か売るほうが得かは、あなたの手元で出せます。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*条文は e-Gov 法令検索の法令APIで宅地建物取引業法施行規則の原文を取得し、2026年9月21日に第16条の11第1号のイからヘまでを読んで書いています。引用した投稿は電話帳ナビに2026年9月21日時点で表示されていたものの抜粋で、投稿者の本人確認はされていません。特定の会社名は書いていません。投稿の内容を、行政が認定した違反として扱ってはいません。個別の物件の価格は示していません。売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。*