ひさです。今日は1つの建物の話です。
同じマンションの部屋が◯◯万円で出ているから、うちもそのくらいですよね。

相談で一番よく聞く値付けの根拠です。でも、同じ建物の売出価格を8件並べると、その根拠がどれだけ当てにならないかが分かります。
建物名は出しません。渋谷区・築2004年・鉄筋コンクリート造。2023年から2025年に売りに出た8件を、当社の割高診断データ(売出資料から抽出・買い手の融資評価の計算式で評価額を付けたもの)から並べました。
8件の並び
| 売出の年 | 広さ | 売出価格 | ㎡単価 | 家賃 | 表面利回り | 評価額 | 売出−評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 30.97㎡ | 4,200万円 | 136万円 | 11.9万円 | 3.40% | 3,447万円 | +753万円 |
| 2023 | 44.35㎡ | 5,950万円 | 134万円 | 19.8万円 | 3.99% | 6,003万円 | −53万円 |
| 2024 | 26.95㎡ | 4,540万円 | 168万円 | 13.1万円 | 3.46% | 3,906万円 | +634万円 |
| 2024 | 34.33㎡ | 4,600万円 | 134万円 | 15.0万円 | 3.91% | 4,523万円 | +77万円 |
| 2024 | 42.60㎡ | 7,300万円 | 171万円 | 22.0万円 | 3.62% | 6,757万円 | +543万円 |
| 2025 | 26.95㎡ | 4,600万円 | 171万円 | 13.0万円 | 3.39% | 3,983万円 | +617万円 |
| 2025 | 26.95㎡ | 4,660万円 | 173万円 | 12.9万円 | 3.32% | 3,949万円 | +711万円 |
| 2025 | 31.37㎡ | 5,600万円 | 179万円 | 14.9万円 | 3.19% | 4,441万円 | +1,159万円 |
同じ建物です。㎡単価は134万円から179万円まで、3割以上の幅。買い手の融資評価との差は、−53万円から+1,159万円。一番安い値付けと一番高い値付けの間に、1,000万円以上の開きがあります。
理由1。「買った値段」から値付けしている
売出価格が評価から大きく離れている部屋(+600万〜+1,159万円)は、表面利回りが3.2〜3.4%と低い。つまり家賃に対して値段が高い。
これは、売り手が「自分が買った値段」を基準にしているときの典型です。買った値段より安く売りたくないので、家賃と関係なく値を付ける。買い手は家賃で見るので、その値段では融資が付きません。逆に、評価とほぼ同じか下回っている2件(−53万円・+77万円)は、表面利回りが3.9〜4.0%。家賃から逆算した値付けです。
理由2。広さで㎡単価が変わる(狭いほど高い)
26.95㎡の3件は㎡単価168万〜173万円。34〜44㎡の3件は134万円。狭い部屋ほど㎡単価が高いのは、ワンルームの一般的な傾向です(総額が低いぶん買い手が多い)。だから「隣の部屋が㎡単価170万円だった」を、自分の35㎡の部屋に当てはめてはいけない。広さが違えば、帯が違います。
理由3。年によって、売り手の強気が違う
2023年の2件は㎡単価134〜136万円。2025年の3件は171〜179万円。同じ建物で、2年で3割上がっています。家賃はほとんど変わっていない(13万円前後)ので、上がったのは売り手の希望です。
売り出されている ≠ 売れている
この2年の売出価格を見た人が「相場が上がった」と思うのは自然です。でも、上の表で2025年の3件は全部「危険」(評価から大きく乖離)。売り出されているだけで、売れているとは限りません。
自分の部屋を、どの帯に置くか
この建物で、いまの家賃13万円・27㎡の部屋を売るなら、帯は3つあります。
「高く出す」を選ぶのは自由です。ただし、この建物で2025年に高く出した3件が、その値段で売れたかどうかは、このデータでは分かりません(売出資料は成約を追っていません)。
今日やること
同じ建物の8件を読めるようになると、営業マンの「相場は◯◯万円です」の裏側が見えます。私は仲介業者ではないので、「持て」とも言えます。トップの金利上昇シミュレーターで、高く出して待つ間の返済がどう動くかも見ておいてください。自分の建物の売出資料の読み方で迷ったら、下のどれかへ。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*数字は当社の割高診断データ(2023〜2025年の売出資料)から、1棟8件を建物名・部屋を伏せて並べたものです。評価額は買い手の融資評価の計算式で出した参考値であり、査定ではありません。売出価格は成約価格ではありません。特定の物件の価格を示すものではなく、売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。*