ひさです。今日は、売ると決める前の話です。
「いくらになりますか」と聞くと、不動産会社から査定書が返ってきます。そこに書かれた数字を、多くの人はそのまま「相場」だと受け取る。でも、その数字は3つのうちのどれかの計算で出ています。どの計算で、どんな前提を置いたか。そこを見ないと、高い数字にも低い数字にも、理由が分かりません。

私は価格を出しません。仲介業者ではないからです。でも、査定の数字がどう組み立てられるかは、売る側が知っておいたほうがいい。根拠を読めれば、値付けの会話が対等になります。
査定の根拠は、この3つ
不動産の評価には、大きく3つの方法があります。査定書の数字は、このどれか(または組み合わせ)で出ています。
自分で住むためのマンションなら、取引事例比較法(近くの成約価格と比べる)が主役です。でも、あなたが持っているのは「貸して家賃を生む部屋」。買い手も、住むためではなく家賃を目当てに買う人が多い。だから投資用ワンルームでは、収益還元法が数字を大きく左右します。
収益還元法は、家賃から逆算する
いちばんシンプルな型(直接還元法)は、割り算ひとつです。
評価 = 1年の手取り家賃(純収益) ÷ 還元利回り
「手取り家賃」は、受け取る家賃から、管理費・修繕積立金・管理委託料・固定資産税などの経費を引いた額です。「還元利回り」は、買い手がその部屋に求める利回り。数字で置くとこうなります。
この1,420万円は、特定の部屋の値段ではありません。「家賃がこれだけで、買い手が5.0%の利回りを求めるなら、逆算するとこのくらいになる」という計算の結果です。前提を変えれば、数字は動きます。
還元利回りが0.5%動くと、評価はこれだけ動く
収益還元でいちばん効くのは、割る数(還元利回り)です。同じ手取り家賃708,000円でも、利回りの置き方でこれだけ変わります。
利回りが4.5%か5.5%かで、評価は約1,578万円から約1,291万円まで開きます。高い査定の数字は、低い還元利回りを置いているだけかもしれない。逆に低い数字は、空室や家賃下落を厳しく見込んでいるのかもしれません。査定書に還元利回りと想定家賃が書いてあれば、そこを見れば数字の出どころが分かります。
「表面利回り」との違いに注意
ここで割っているのは、経費を引いた手取りの家賃です。募集家賃をそのまま価格で割った表面利回りとは別物。表面と実質のズレは「表面利回り4%の実質は2%台」で書きました。査定書の利回りが「表面」なのか「手取りベース」なのかは、そこを確かめてください。
取引事例比較法は、同じ建物でも揃わない
もう一つの根拠が、似た成約と比べる取引事例比較法です。ただしワンルームは、同じ建物でも階・向き・広さ・リフォームの有無で条件が違う。成約した時点の相場も動きます。だから「同じ建物で○○万円だった」は、そのままあなたの部屋には当てはまりません。同じ建物なのに売出価格が大きく違う理由は<a href="/onaji-tatemono-de-1000man-chigau/">別の記事</a>に書きました。
そして、ポータルに並ぶのは成約価格ではなく売出価格(売り手の希望)です。その希望の多くが、買い手の融資評価より高い水準にあることは<a href="/uridashi-kakaku-no-shoutai/">「売出価格の56%は評価より高い」</a>で数えました。事例を見るなら、売出ではなく成約を見る。ここがずれると、値付けを丸ごと間違えます。
原価法(積算)が区分で効きにくい理由
3つ目の原価法は、「同じものを造り直すといくらか」で評価します。一戸建てや土地では効きますが、投資用の区分マンションでは主役になりにくい。土地の持ち分が小さく、買い手も「造り直す費用」ではなく「家賃をいくら生むか」で値段を判断するからです。銀行が融資の担保を見るときには積算を使うことがありますが、売買の値付けの軸は、やはり収益還元に寄ります。
査定書で見る3か所
査定書が届いたら、数字の大きさより先に、根拠の欄を3か所見てください。
この3つが分かれば、「なぜこの数字になったか」を売る側から質問できます。高い査定に飛びつく前に、前提を確かめる。前提が薄ければ、数字も薄い。
まず、自分の部屋の手取り家賃と残債を並べてみてください。トップの金利上昇シミュレーターで、売れるまでの間に返済がどう変わるかも見えます。査定書の写真を送ってもらえれば、根拠の3か所を私が一緒に読みます。
数字を見てから、決めてください。
売れ、とも持て、とも私は言えます。仲介業者ではないからです。出口は3つ用意してあります。
*評価の手法は一般的な説明で、数字はすべて計算例です。実際の評価は空室率・修繕の一時費用・立地などを織り込みます。個別の物件の価格は示していません。売却の査定・媒介は免許を持つ不動産会社が行います。数値は前提の置き方で変わるため、査定書の根拠とあわせてご確認ください。*